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高松高等裁判所 昭和62年(ツ)19号 判決

上告人 田中稔

右訴訟代理人弁護士 枝川哲

被上告人 畠田キミコ

右訴訟代理人弁護士 早渕正憲

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第一点について

袋地である農地についても法定の囲繞地通行権が認められるが、その農地に畦畔により人が通行できても、その農地での耕作に関する通常の方法として耕耘機を用いている場合にその耕耘機が通行できる幅員のある通路がなければ、その農地は袋地であるというのを妨げるものではない。原審認定の事実によると、被上告人が所有の田である徳島県阿南市中大野町北傍示三八四番田八八二平方メートル、同所三八五番田四一六平方メートルを耕作するに当たり、通常耕耘機を運転して本件係争地を通行しており、右田から幅員約一メートルの畦畔があり人一人であればこれを通って公道に出られるが、畦畔は本来通路の用に供するものではない上、その幅員では耕耘機による通行ができないものであるから、なお、右田は袋地であるということができ、右田を袋地とした原審判断に何ら法令の解釈適用の誤り、理由不備の違法はない。この点の上告理由は採用できない。

上告理由第二点について

法定の囲繞地通行権を認める場所は、必ずしも、公道(私道であっても、一般人の通行の用に供されているものを含む。)への最短距離によるべきではなく、承役地と公道との接続が容易であるかどうか、係争地が従前私道として通行の用に供されていたかどうか等をも考慮して、承役地負担者にとって最も損害の少ない場所によるべきものである。原審認定の事実によると、公道への最短距離という点では他の場所がないわけではない。しかし、本件係争地は、その接続部分からコンクリート舗装がしてあり一般に通行の用に供されている私道と接続し、長年の間奥の農地に通ずる私道として使用されており、本件係争地が被上告人にとって最も損害の少ない場所であるということができるから、これをその承役地とした原審判断に審理不尽の違法は存在しない。この点の上告理由は採用できない。

よって、本件上告は理由がないので、民事訴訟法四〇一条、九五条、八九条の規定に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 髙木積夫 裁判官 孕石孟則 高橋文仲)

〈以下省略〉

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